コラム✹奇演・名盤✹人生50年、やりたいことをやって生き抜いたか!?怪物ビーチャムのペール・ギュント http://amzn.to/dLX41W
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- On 6 2月 | '2011
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遺作とタイトルがついている曲が多いのがショパン。ショパンの作品番号は74番までついていますが、66番以降はショパンの死後の出版です。そして、作品番号のついていない『遺作』と成っている曲は少なくとも56曲有ります。その中には映画『戦場のピアニスト』で親しまれるようになる『嬰ハ短調のワルツ』を含んでいます。
ショパンが生前に出版した最後の作品は『チェロ・ソナタ』。ショパンは著作権についても考えのあった最初の作曲家で、出版譜は直接ロンドン、パリ、ドイツの出版社に浄書して送っています。ショパンがそうしたのは、パリで出版した楽譜がロンドン、ドイツで発行される時に印刷ミスがあると自分の意図した音楽では成ってしまうからです。けして利益がらみではないようです。そして『遺作』と成った曲は殆どが友達や世話になった人に贈った御礼のような作品で、友人に贈ったそうした曲は出版もされていますが出版譜は、誰もが弾いて楽しめるようにイントロやエンディングが異なっています。
ショパンは自分が満足できる音楽だけを残して、49年の生涯を閉じました。
満足できる音楽を自由にやりたいように演奏、録音をした指揮者がイギリスの指揮者、サー・トーマス・ビーチャムです。ストコフスキーを初めとして1950年代にレコードをたくさん録音した指揮者は、楽譜にはない演奏を良くしていますけれども、ビーチャムのレコードもそういった演奏がとても多くあって新鮮に楽しむことが出来ます。レコード録音のレパートリーのスタンダードも構築したような業績もあるので、親しんでいる曲からでもビーチャムの録音盤と聴き比べるのは面白く勉強に成る事でしょう。
『朝』、『オーセの死』、『アニトラの踊り』、『ソルヴェーグの歌、子守歌』など、小学校の音楽の授業でもお馴染みの『ペール・ギュント』は最初の試みに良いと思ってます。多くの愛好家が居ることも、誰もが楽しんでいるからではないかしら。わたしの通った小学校、中学校では『朝』は掃除時間の音楽として毎日聴いていました。『ソルヴェーグの歌』は松本零士のアニメ『銀河鉄道999』でも良く使用されているのでお馴染みですね。ペール・ギュントはノルウェーの劇作家、イプセンの戯曲。わたしの考え方として有名な『人形の家』には影響も受けているところがあります。
レコードはサー・トーマス・ビーチャム指揮、ロイヤル・フィルハーモニック管弦楽団とビーチャム・ソサエティ合唱団。1959年初発(ASD258)で、ホワイト・アンド・ゴールド・ラベル盤がファースト・プレスになります。白金ラベルと日本では言われていて、重量盤。LPレコードと言うよりもSP盤を持ったときの手応えを感じる音盤です。現在日本で手に入れたいとしたら、2万円がベースラインではないでしょうか。
それが2010年7月に、Hi-Q Records のプレスで復活しています。>> Peer Gynt (Ogv) [12 inch Analog]
CDも2011年2月7日発売でシリーズが出ました。
- Haydn/Mozart: the Classical Tr
- Sir Thomas Beecham
- Various: French Music
- Various: English Music
- Various: the Later Tradition
「ペール・ギュント」のCDはこちら>> Peer Gynt, Danses Symph., Var. Op.51 – Beecham
同じ録音は当時欧米ではプレスが絶えかけていたのにSP盤でも発売されています。そうした面でも随分とビーチャムが手広く働きかけたのが感じられます。
大富豪指揮者の『わがまま』な贅沢を叶えた録音です。英国音楽界を牛耳っていたとも言われるほどの存在だった怪物、サー・トーマス・ビーチャムが子供の頃から好きだった冒険メルヘンを劇音楽にしたグリーグの「ペールギュント」からビーチャムの好きな音楽だけを選んで編曲、録音されたレコードです。
全曲盤とも有名な2つの組曲版とも違います。演奏にはソプラノや合唱団まで動員してまで、凄い中途半端な音楽になっています。全曲盤を聴いたことがあれば、どうしてこの曲はないの?どうしてこの曲を選んだの?って、思うことでしょう。
だけれども組曲版が好きで、でも全曲盤はストーリーがわからないし、と思っているならきっと楽しめますよ。
プチ贅沢でなくて、秀吉の黄金の茶釜や金箔をふんだんに使った屏風絵が圧倒するだけの金持ちのおもちゃには思えないように、数ある指揮者や歌手のわがまま、自己満足、力を誇示するために録音されたレコードの中でもツタンカーメンの黄金のマスクに匹敵する文化遺産になるレコードです。
録音されたのは1957年。眠っていた録音が復活したモノではないし英EMIのカタログから消えることなく、50年間以上も多くのクラシック愛好家が代々忘れずに愛聴しているのですから、評価の方も高いことは証明されているでしょう。
録音のためのスタジオから、当時最新だった録音機まで気配りも怠りなかっただけに面白いサウンドに仕上がっています。ステレオ録音が未だ実験段階だった時期の録音なのですが、それがにわかに信じがたいほどの優秀録音です。
サー・トーマス・ビーチャムは82歳まで生きた長寿だけども、このレコードの発売の翌年1960年に自分の為に創設、編成したロイヤル・オーケストラ後継者にルドルフ・ケンペを指名して引退。1961年に他界しています。現在でも世界4番目と言われる製薬会社の御曹司に産まれたビーチャムは、やりたいことをやって生き抜いた音楽家として満足でしょう。
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