ぴあの玉手箱

Mondo Piano Music Journal

熊本は夕方、5時前ぐらいに雨が降りました。空は雲に覆われてしまったので月は見えないだろうと思ったのですけれども、薄い雲越しに涼やかに光り輝いていました。雲があったからか、暗いからか写真では斜がかかってしまっていますが裸眼では輪郭はくっきりと見えました。今日(2011年2月18日)は満月だったようです。と、枕もよろしく「名盤カレンダー》は天体の音楽です。

1930年2月18日、元惑星《冥王星》が発見された日。

Sir Adrian Boult Conducts Planets

アメリカ・ローウェル天文台のクライド・W・トンボウさんが発見、翌年《冥王星(プルート)》と命名されて太陽系の9番目の惑星とされてきましたけれども、2006年に惑星ではないとされてしまいました。さて、ホルストが組曲《惑星》を作曲、サー・エイドリアン・ボールトによって初演されたのが1918年9月29日の日曜日でした。1914年から16年にかけて作曲されたのは、まず組曲の最後の第7曲になる《海王星》。あとは第1曲の《火星》から《金星》、《木星》、《土星》。そして《天王星》と《水星》という順番だったと言う事です。

この事からも交響作品の最後がフェード・アウトよろしく、女声コーラスが数を少なくしていって最後一人のか細い声が舞台裏から聞こえて終わって行くといった革新的な音楽として、完結しているのだと思います。

《冥王星》が発見された事はホルストも知っていたものの、追加しませんかと云われても素知らぬ顔だったのは当然の事。ホルストは占星術に親しんでいて”Recently the character of each planet suggested lots to me and I have been studying astrology fairly closely”と、彼の伝記の中に神秘的な一文があり作曲の動機と思われます。《火星》を作曲したのが第一次世界大戦が勃発した時である事から、現在人気曲になる様な全体像になったのでしょう。《火星》はリズミックで打楽器が活躍しますが、冒頭は低音の弦楽合奏が行進の足踏みのようなリズムを刻んでいるだけです。遠くから近づいてくるような響き、もしかしたら全体の終わりがフェード・アウトして行くので、対象的にフェード・インの着想はあったのではないかしら。わたしは無限の”宇宙の奇跡”をホルストの心中に見る思いです。

“During Saturn, the isolated listeners in the dark, half-empty hail felt themselves growing older at every bar. But it was the end of Neptune that was unforgettable, with its hidden chorus of women’s voices growing fainter and fainter in the distance, until the imaginative knew no difference between sound and silence.”と初演の様子をホルストの娘が書いています。曲の理解が進むにつれて、組曲《惑星》の楽しみ方が変わってくる秘密がここにありそうです。《木星》を中心にシンメトリカルな前半と後半。さて、あなたはどちらかだけの演奏が聞きたいかと問われた時に、どちらを選びますか?

初演をしたサー・エイドリアン・ボールトの最初の録音は、1945年1月2日から、5日に掛けて。ベッドフォードでウォルター・レッグのプロデュース、アーサー・クラークの録音で行われました。12インチ盤、7枚組での発売でした。

  
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planet-10_bbc.mp3 (5342 KB)

B.B.C. Symphony Orchestra (Boult): “The Planets” Suite, Op. 32 (Holst). H.M.V. DB6227-33 (12 ins), Auto DB8994, DB8995000. Recorded under the auspices of the British Council.


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